建築物の事前調査でアスベストが有ると判断された場合、アスベスト処理を行う必要があります。主な処理方法は3つ。「除去工法」、「封じ込め工法」、「囲い込み工法」です。それぞれの特徴を知り、どの処理方法が一番適切であるかを判断したいものです。
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事前調査のポイント
アスベスト事前調査が必要なのは? 建物の解体や改修をする場合「アスベスト事前調査」が法律で定められている 使用中の建物にアスベストを含む吹付剤の使用規制がある 建物の売買や貸借をする場合もアスベスト使 ...
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代表的なアスベスト処理工法
【1】除去工法
建物に使われているアスベストを完全に除去し、
新たな非アスベスト素材の建材と入れ替える工法です。
劣化程度が高いものや、振動等によって飛散のおそれが強いものは、除去工法が必要となります。石綿含有吹付け材及び保温材等に対して適応が可能です。「掻き落とし・切断・粉砕による除去法」と「掻き落とし・切断・粉砕によらない除去法」があります。
アスベストを完全に除去しますので、その後のアスベスト対策は必要ありません。
メリット
- 処理後の当該特定建築材料に関する維持保全が不要
- 建築物の解体時等に当該特定建築材料の除去の考慮が不要
デメリット
- 環境保全、労働安全衛星の厳密な管理が必要
- 廃石綿等の処理が必要
- 他工法に比べて工事費用が高価
- 他工法に比べて工事期間が長い
- 除去後に設置する代替材料の検討が必要
【2】封じ込め工法
アスベストの表面に固化剤を吹き付けて、
粉じんを封じ込めてしまう工法です。
アスベスト内部に固化剤を浸透させ、粉じんが飛散するのを抑えます。
吹付け石綿、石綿を含有する吹付けロックウール、金属折版屋根用石綿含有断熱材に対して適用が可能です。封じ込め工法には「塗膜性封じ込め処理(表面固化型)」と「浸透性封じ込め処理(浸透固化型)」があります。
工事費用が比較的少なくて済みますが、一定期間ごとの検査・メンテナンスが必要です。
メリット
- 除去工法に比べて、環境保全、労働安全衛星の管理が容易
- 除去工法に比べて、工事費用が安価
- 除去工法に比べて、工事期間が短い
デメリット
- 処理後も特定建築材料が残る
- 特定建築材料の劣化、損傷の程度が大きい場合は実施困難
- 下地との接着性が前面に不良な場合は実施が困難
- 処理後の維持保全に留意する必要
- 建築物解体時等に特定建築材料の除去が必要
- 処理後も建築物の使用、利用者のアクセスに対する配慮が必要
- 使用部位に応じて、粉じん飛散防止剤の防耐火等の検討が必要
【3】囲い込み工法
既存の特定建築材料はそのまま残し、アスベストが吹付けられている個所を、
非アスベスト建材で覆ってしまう方法。
これにより、アスベストが飛散するのを防ぐことができます。石綿含有吹付け材、及び保温材等にたいして適用が可能です。囲い込み工事で特定建築材料に接触せず、振動等による石綿の飛散のおそれがない場合は、特定粉じん排出等作業に該当しないので届出は不要ですが、作業内容について都道府県等に事前に相談することが望ましいとされています。
工期を短縮できますが、一定期間ごとの検査・メンテナンスが必要です。
メリット
- 除去工法に比べて、環境保全、労働安全衛星の管理が容易
デメリット
- 処理後も特定建築材料が残る
- 室内・天井高等が滅少する場合が多い
- 特定建築材料の劣化、損傷の程度が大きい場合は実施困難
- 処理後の維持保全に留意する必要
- 使用部位に応じて、囲い込み材料の防耐火等の検討が必要
- 囲い込み材の貫通するダクト、配管等の周辺処理に留意が必要
- 処理工事前に、飛散防止剤による処理が必要な場合あり
- 定期的な点検が必要なため、点検用の開口が必要
処理方法の選定
アスベストの損傷程度や飛散のおそれに応じて、必要な処理方法を選択する必要があります。目視によって以下のような状態がみられる場合、飛散のおそれが大きく除去処理が必要です。
劣化程度の判断ポイント
- アスベスト表層の毛羽立ち
- アスベスト繊維のくずれ
- アスベストたれ下がり
- 下地間の浮き・はがれ
- アスベスト層の損傷・欠損
飛散のおそれが小さい場合や、飛散のおそれがあっても接触や振動等による損傷がない場合は、除去、封じ込め、囲い込みのいずれかの処理を選定することが可能です。
参考環境省「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」