アスベストの基礎知識

アスベスト含有建材使用物件の資産価値

アスベスト含有建築物の資産価値

アスベスト調査をすることで、アスベスト含有建材の使用がわかると、
不動産取引において資産価値が下がるのではないかと心配される方もいることでしょう。

実際のところ、不動産取引をする際、アスベスト含有建材が使用されいることがわかった場合、アスベスト除去費用が資産価値から減額されます。本来、建築物所有者(管理者)は、アスベスト含有建材の有無や状態を把握しておく必要があります。

アスベスト調査がされていない、もしくは不明の場合

買い手側が専門家によるアスベスト調査を行い、減額交渉されるのが一般的となっています。買い手側のアスベスト調査では、テナントのばく露リスクまで評価されて不動産取引が成立しな場合や、交渉が難航するだけでなく時間も要することから、実際よりも不利になることも少なくありません。

ココがポイント

建築物所有者(管理者)は、早めにアスベスト含有建材の有無、状態を把握し、計画的にアスベスト除去作業をおこなうことで不当な減額交渉に対抗することができます。

2010年4月から会計における資産除去債務が導入され、アスベスト含有建材の有無調査により資産除去債務見積もることで負債計上し、アスベスト除去費用を有形固定資産に計上する会計処理をとることとされました(有価証券発行者)。

このような会計ルールのみならず、アスベストにばく露することによる健康被害が増えていることから、規制の強化が行われ、建築物におけるアスベスト調査やアスベスト除去への責任は大きくなっています。正しい調査と状況の把握、計画的な対応が健康被害の拡大を防止し、信頼につながることになります。不動産取引を優位に行うためにも、はやめのアスベスト調査をお勧めします。

アスベスト含有建築物の不動産取引

不動産取引においては、アスベスト調査に関して以下の基準が設けられています。

  1. 不動産鑑定評価(不動産鑑定評価基準)
    不動産取引時における土地や建築物等の適正評価にあたり、確認する必要のある鑑定評価事項に「アスベスト等の有害物質」があるため、アスベスト調査が必要になります。
  2. 投資用不動産の取引や企業買収等での資産評価
    デューディリジェンス(投資判断のための調査)において物理的調査報告として建物環境のリスクを評価。ここで、建物環境リスク評価の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。
  3. 建築物の売買等の際の重要事項説明(宅地建物取引業法)
    アスベスト調査の結果がある場合には、調査結果の内容を説明する必要があります。
  4. 住宅性能表示(住宅の品質確保の促進等に関する法律)
    住宅性能表示制度により既存住宅を性能表示する場合、空気環境の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。

ココがポイント

以前は、不動産取引において、アスベスト問題はそれほど重要視されていませんでしたが、アスベスト除去工事において、投資家による物件のバリューアップ改修工事において支障がでたり、テナントの事業に影響することから、アスベスト調査で評価するようになっています。

不動産取引の際、買い手は上記の情報や竣工図面等から、アスベスト含有建材の有無とアスベスト除去対策費用を想定し、減額する資産価値を計算します。情報が不十分な場合、買い手側は想定しうる最悪の状態で想定するため、売り手にとっては想定以上の減額になるケースが少なくありません。
不動産取引を優位に行うためにも、不動産取引の際には事前のアスベスト調査をお勧めします。

賃貸している建築物への対応

建築物を維持管理する際には以下の項目の対応が必要です。

  1. 資産除去債務の評価(企業会計基準)
    不動産評価いおいて、有形固定資産の原状回復のために必要な将来のアスベスト含有建材の処分費用を負債として評価するため、アスベスト調査が必要になります。
  2. 定期調査報告(建築基準法)
    一定規模以上の特殊建築物などや政令で定められた建築物の定期調査で、吹付けアスベスト等の使用状況、劣化の状況、除去・飛散防止措置の実施状況を調査し、特定行政庁に報告する必要があります。
  3. 土地工作物責任(民法717条)による損害賠償請求
    建築物の利用者がアスベストのばく露により健康障害を生じた場合の土地工作物責任による損害賠償請求に対し、アスベスト調査をしアスベスト含有建材の存在を確認する必要があります。
  4. 石綿障害予防規則による飛散防止対策
    2以上のテナントが入ったビルなどの共有スペースにあるアスベスト対策は建築物所有者の義務になります。

以前の不動産評価は使える?

建築物解体時には、大気汚染防止法、石綿障害予防規則、建設リサイクル法などによって、アスベスト(石綿)の事前調査を行う義務があります。維持管理業務の一環としてアスベスト調査を行った結果は、不動産評価に活用することができます。

ただし、2008年2月の厚生労働省通達により、アスベスト調査の対象にトレモライト、アクチノライト、アンソフィライトが加えられました。2008年2月以前の調査結果の場合、これらの追加の分析が必要になります。

調査対象

ロシドライト、アモサイト、クリソタイル、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライト

引用:国土交通省「アスベスト対策Q&A」

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